松浦武四郎が、その人生の終わりに旅先で知り合った人々や由緒ある神社などから贈られた木片で作った一畳だけの書斎「一畳敷」をモティーフにした企画展開催のプロジェクトです。北海道の木の芸術や文化で再現された「一畳敷」の小宇宙を世界中で紹介していくために、まずはスイスにある、ル・コルビジュエの名作住宅「小さな家」にて開催を予定しています。皆さんと一緒に、松浦武四郎の美学を世界に発信していきたいです!
松浦武四郎の一畳敷とは
武四郎の70歳の古希祝いとして東京の神田に建てられた一畳だけの書斎。日本各地の交流のあった人物から贈られた寺社仏閣の由緒ある木片から書斎を建造し、旅先の友人の想い出とともに1887年「一畳敷」を完成させます。その空間には89カ所もの由緒ある木片が使用され、武四郎はそのすべての由来を「木片勧進帳」という1冊の本にまとめました。死後に自分の亡骸を「一畳敷」とともに焼くように記しましたが、遺族は彼の記憶として部屋を残しました。現在は、三鷹の国際基督教大学の泰山荘内に保存されています。
The One-Mat-Room Movie from foldingcosmos on Vimeo.
( 「一畳敷」動画 * Vimeo )
終の住処(ついのすみか)としての一畳敷
「最小の瞑想空間」や「ひとりのための空間」への憧れは、国境や人種を越えて幼い頃から人々の心の中にあり、それはいつしか「終の住処」への模索につながっていきます。人生の旅の終わりに自ら「一畳敷」を創り上げた武四郎から学ぶことは多く、その空間の象徴でもある「床の間」に人生の何を残して何を飾るのか?という問いにもつながります。武四郎の場合、それは旅の先々で出会った人々との対話と記憶であり、自身の思い出のこもった木片を丁寧に組み合わせた「一畳敷」という空間を作ることによって自らの「終の住処」としたのです。この空間に込めた武四郎の美学は世界中の人々から多くの共感を呼んでいます。
北海道と祖父と武四郎とを結ぶ点と線
2011年1月に東京で武四郎の「一畳敷」の木片の物語と詳細に書かれた美しい北海道の地図の部分を初めて見た瞬間、私の父方の祖父が木材を流すために水運権を買ったという川はこの地図の中に描かれているはずだと直感しました。その後、祖父の川の名前を調べて訪ねる道中に立ち寄った丸瀬布の資料館で、武四郎が「一畳敷」を作る際に著した貴重な「木片勧進帳」のコピーを見つけました。武四郎研究の第一人者であるアメリカのコロンビア大学のスミス教授に京都で見せていただいたものと全く同じもので、小樽を拠点に木材と貿易の仕事で世界中を駆け回り私が生まれる前に亡くなった祖父が私をその場所に導いてくれたような偶然でした。
(祖父:倉島 永一郎 )
建築の巨匠ル・コルビジュエと「一畳敷」のコラボレーション展
~フォールディング・コスモス 「小さな家」~
今回、北海道150年と松浦武四郎生誕200年のプログラムとして、スイスのロング・ナイト・ミュージアムを皮切りに、ル・コルビジュエが隠居した両親のために故郷スイスのレマン湖のほとりに建てた名作「小さな家」でプロジェクトを開催します。北海道とほぼ同じ面積を有する山と湖と森の国、スイス。美しい自然の中にある名作住宅で、北海道の木の芸術と文化を紹介していきます。飛生と札幌を拠点に活躍する彫刻家・国松希根太氏の空間の内と外をつなげる作品や、旭川が世界に誇る木工技術とナラ材を使用したデザインなどで多彩に空間を構成します。
モダニズム建築の巨匠ル・コルビジュエが最後に過ごした場所 ー 南仏に現存する「カップ・マルタンの休暇小屋」は、武四郎の「一畳敷」に通じる瞑想的な最小空間です。2011年から世界を巡回しているこのプロジェクトは、「終の住処」「最小空間」をキーワードにル・コルビジュエ没後50周年企画としてパリ近郊の名作「サヴォア邸」でも2015年に開催しました。
「小さな家」
「カップ・マルタンの休暇小屋」
「サヴォア邸」
「50周年公式ポスター」
会場となる『小さな家』
ル・コルビジュエの名作住宅「小さな家」のあるヴヴェイ(VEVEY)は、スイス西部ヴォー州のレマン湖北岸に位置し、美しい葡萄畑に囲まれています。中世からワインの産地として栄え、19世紀には世界各国の王侯貴族や芸術家に愛される湖畔のリゾート地として発展を遂げ、隣のモントルーとともに「モントルーリヴェエラ」と呼ばれています。各国出身の著名人が多く住み、特にチャールズ・チャップリンが晩年を過ごしたことでも知られています。食品メーカーのネスレの本社とネスレ財団が運営するミュージアム「アリマンタリウム(食の美術館)」があり、会場となる「小さな家」はネスレ本社から湖畔沿いを歩いて10分ほどの場所に静かに佇んでいます。
A VISIT TO THE 'PETITE MAISON' from Gigon/Guyer on Vimeo.
プロジェクトの課題
予算の少ない中で2011年から始まった最小空間で構成されたとても小さなプロジェクトですが、そのテーマが国境を超える普遍性を持つため、長い旅の中で多くの理解者や協力者を得て、素晴らしい建築空間での開催もできるようになり、2019年まで開催地が決まっています。それに反比例する形で、世界各地を回るための移動費や輸送費、開催に当たっての詳しい事前の打ち合わせのための渡航費は常に不足し、プロジェクトを継続するためのより良い方法を模索しています。
武四郎が繋ぐ世界の絆
世界中の人々に北海道の木の芸術や文化、日本の伝統工芸をわかりやすく伝えることはもちろんですが、国内外の世界中の人々と協働して開催する本プロジェクトの旅を通して得られた成果を、松浦武四郎の「一畳敷」のようにその対話と記憶を集めて構成し、それによって完成する「終の住処」のひとつのかたちを北海道の木の芸術と技術を駆使して北海道につくるのが最終的な目標です。また、旅を通して知り合った世界中の開催地の人々をその場所に招いたり、3.11やいろいろな災害と人災で故郷や思い出の家を半永久的に失った人々の「終の住処」のひとつの選択肢になりえたらと考えています。
スケジュール
5月25日(金曜日)
フォールディング・コスモス 「小さな家」| * fodling cosmos Villa « Le Lac » Le Corbusier
完全招待制プレビュー
5月26日(土曜日)スイスの美術館が連携するロングナイトミュージアムでオープニング。
以降、6月24日(日曜日)まで、基本的に土日のみ公開。
( ロング・ナイト・ミュージアム )
支援金の用途
印刷物制作・発送費:100,000円
輸送・移動・設営費:200,000円
リターン
3,000円
ル・コルビジュエ「小さな家」編及びミース・ファン・デル・ローエ「バルセロナ・パビリオン」編等のオリジナルポストカード10枚セット(会期終了後7月下旬発送予定)
「バルセロナ・パビリオン」編 国松希根太" GLACIER MOUNTAIN "
with Georg Kolbe " The Morning "
5,000円
通常の土日公開日の「小さな家」招待券とオリジナルポストカード10枚セット
10,000円
5月25日のプレビューの映像(5月25日~1週間程度)配信とオリジナルポストカード10枚セット
15,000円
5月25日の完全招待制プレビュー (@スイス、ル・コルビジュエ)へのご招待(4名1グループでお申し込みの場合、4名で50,000円)
呈茶のサービス付。全体で90分程度(時間予約制・先着順応相談)オリジナルポストカード10枚セット
応募者プロフィール
倉島美和子
父親の赴任先だった標茶町で生まれ9歳まで過ごした後に進学のため札幌市へ(本籍は小樽市)。札幌北高等学校から筑波大学芸術専門学群建築デザインコース入学。インテリアデザインと家具デザインに興味を持ち、インダストリアルデザインコース卒業。在学時に講評を受けたイギリスのロイヤル・カレッジ・オブ・アートの教授のアドバイスで、卒業後オックスフォード州立ライコート・カレッジで家具デザインと製作を学ぶ。その後さらにイギリスで学ぶために受けたロータリー財団奨学金の主旨でアメリカへ。その際に面接官だったカンディハウス社の故・長原實氏に励まされ、ニューヨークのパーソンズ・スクール・オブ・デザインでインテリアデザインを専攻しながらイエール大学で英文学、イタリアでフレスコ画を学ぶ。帰国後、岡山県立大学勤務時代に瀬戸内を拠点に日本の伝統文化や建築を吸収した後、プレステージ・ジャパン社(タイムアンドスタイル)を経てICSカレッジ・オブ・アーツで教える傍らフォールディング・コスモス・プロジェクトをスタート。
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